こんにちは、
ともやんです。
評論家の故吉田秀和氏が実際に聴いて最高と第九だといった録音がオルフェオというレーベルから出ました。
吉田氏が絶賛したというのが、1954年8月のフルトヴェングラー&バイロイト祝祭管によるベートーヴェンの第九なのです。
フルトヴェングラー 最晩年 バイロイトの第九
1954年8月8日のフルトヴェングラーの亡くなる約4ヵ月前、つまり最晩年に演奏された第九は、伝説的な名演だったと知られています。
以下の吉田秀和氏のコメントを引用しますが、まさにキング・オブ・第九とも言える演奏だったようです。
しかし残念ながら残されている録音が、1954年という時代を考えてもあまりにも悪く、これまでリリースされたCDも受け入れがたいものでした。
今回は、相当な手間と時間と労苦を掛けて行って修復でようやく鑑賞できるレベルなったようです。それに関してはこの記事の末尾にブックレットから引用しています。
僕も聴きましたが、最晩年とは思えない気迫漲るものですが、マイクの位置の関係で木管の音が大きかったりバランスは悪いです。
ただ、吉田氏がコメントしているように第3楽章は素晴らしいです。
よくぞここまで修復して頂いたという感謝とある程度頭の中で修復しなければならない部分もありますが、フルトヴェングラーの貴重な音源は必聴です。
『バイロイトの「第9」は、私の管弦楽演奏会経験の王者』 吉田秀和
「私が彼から受けた最も深刻な感銘は・・・これも前に書いたことだが・・・バイロイトできいたベートーヴェンの第9交響曲の演奏から来たものである。あれは本当にすごかった。その後、私も「第9」を何回、何十回きいたか知れないが、あの時以上の「第9」は、ついに、きいたことがない。フルトヴェングラーにとって「第9」はあらゆる交響音楽の王者、至高究極の作品だったように、私にも、あの「第9」はあらゆる管弦楽演奏会の経験の王者だった。」 レコード芸術・別冊「フルトヴェングラー」より 1984刊「フルトヴェングラーは、その後、ザルツブルクで「ドン・ジョヴァンニ」と「フライシュッツ」を、バイロイトで「第9」をきいた。ことに「第9」は感心した。第3楽章がよかった。第4楽章の歓喜の主題がバスで出た時はずいぶん遅く、それが反復されるたびにだんだん速くなり、次第に盛り上がっていって、合唱にもってゆくところは、なんともめざましいばかりだった。」 「音楽紀行」1957刊~「荘厳な熱狂」より (キングインターナショナル)
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フルトヴェングラー バイロイトの第九 1954
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン – Ludwig van Beethoven (1770-1827)
交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」 Op. 125
Symphony No. 9 in D Minor, Op. 125, “Choral”
1.(17:39) I. Allegro ma non troppo, un poco maestoso
2.(11:54) II. Molto vivace
3.(19:32) III. Adagio molto e cantabile – Andante moderato
4.(22:02) IV. Finale: Presto – Allegro assai
total(71:07)
作詞 : フリードリヒ・フォン・シラー – Friedrich von Schiller
グレ・ブラウェンスタイン – Gre Brouwenstijn (ソプラノ)
イラ・マラニウク – Ira Malaniuk (ソプラノ)
ヴォルフガング・ヴィントガッセン – Wolfgang Windgassen (テノール)
ルートヴィヒ・ウェーバー – Ludwig Weber (バス)
バイロイト祝祭合唱団 – Bayreuth Festival Chorus
バイロイト祝祭管弦楽団 – Bayreuth Festival Orchestra
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー – Wilhelm Furtwangler (指揮)
録音: 8 August 1954, Bayreuth, German
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」(バイロイト祝祭管/フルトヴェングラー)(1954)
この1954年の録音は、長いこと、効果のある修復ないしはリマスタリングをすることは技術的問題から不可能だと思われていた。
現存する素材は残念なことに劣悪な状態である。この録音は元々鈍い音なのだが、さらに強烈な雑音やところによっては変調雑音がそれに被さっている。加えて、目立つハム音、歪み、バリバリ音、さらに多少の短い音飛びまである。
音の記録を発掘する、言い換えると、この録音を聞ける音質にまで修復するというという目標から、結局、熟慮の末、修復機器とマスタリング装置が導入されることになった。
もちろん、まださらに深刻な問題があった。部分的にオリジナルのテープ録音の際に生じたとても強いピッチの狂いがあるのだ。おそらく録音テープの欠陥のせいで、テープが再生機のヘッドに沿って滑らかに走ることができなかったのだろう。
テープは何度もヘッドに引っかかっては動くを繰り返し、それによって前述のフラフラしたピッチの狂いや突然のハウリングを引き起こしたのである。また、それよりは軽度な症状であっても、比較的長い時間 の音揺れは、たとえば弦の響きを聞き苦しくし不快な音にしている。
問題なのは一様なピッチの狂いではなく、気紛れなほど多様に生じる音揺れである。こうした不規則な症状はつい最近まで分析したり除去したりすることは不可能だった。
2011年の初頭になってようやく、ミュンヘンのセレモニー社によって修復装置キャプスタンが開発された。これはこの問題を専門に扱うもので、音揺れを分析し音質改善をするが、そこに音響技師が調整できる余地を多く与えている。
1954年のバイロイト音楽祭でのベートーヴェンの第9交響曲は、この装置を用いて修復された最初の録音の一つである。
クリストフ・シュティッケル(リマスタリング・エンジニア、msnスタジオ)
国内盤ブックレットより
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