こんにちは、
ともやんです。
トスカニーニほど、好き嫌いが二分する指揮者も少ないと思います。
僕は、ずっとフルトヴェングラーの重厚さ、哲学的、文学的な演奏スタイルに神秘性を感じ、それに尽きぬ魅力を感じていました。
しかし、トスカニーニの怒っているように聴こえる演奏には、なかなかなじめなかったのです。
それは多くはトスカニーニの演奏の録音のせいとそれに輪をかけたようなデジタル化により、瑞々しさをすべてそぎ落とされたような、干物のような音を聴かされていたからだと分かるようになってから、少し考えが変わりました。
僕自身、多くのLPやCDを聴くことで、自分の中で優秀なイコライザーを持つようになり、古くて鮮度の落ちた演奏も変換して聴かれるようになってから、トスカニーニの演奏が面白くなってきたのです。
そうやって聴く、トスカニーニのベートーヴェンは、正義を目指した志を感じるのです。
トスカニーニ 第九 志の高さと瑞々しさ
ベートーヴェンの第九の自筆譜は、世界遺産にもなっています。
それだけ偉大な曲なので、時の権力者は、この曲の演奏を利用しようとしました。忌まわしきヒトラーは、自身の誕生日に演奏させたりしたそうです。
正義の人、トスカニーニが一番嫌ったことで、生涯ナチスに関与した音楽家は、許しませんでした。
さて、トスカニーニ&NBC交響楽団で、トスカニーニの第九を聴きました。
1939年のツィクルスでの録音です。
トスカニーニは、約10年後に録音していますが、僕はこの39年盤が好きです。復刻の良し悪しもあると思いますが、39年盤の方が瑞々しいと思います。
ワインガルトナーを聴いてから、トスカニーニを聴くと、第一楽章では、おお、怒っている、怒ってる、と感じるのですが、そのうち慣れてきます。
逆に、第二楽章、第三楽章では、その響きに瑞々しい潤いまで感じます。
同じ、1930年代という古い録音ですが、ワインガルトナーは万人受けしますが、トスカニーニは、嫌悪する人もいるでしょう。
しかし、それを受け入れて聴いてみると、ああ、なんて志の高い演奏だろうかと感激すること請け合いです。
トスカニーニは、どうもなぁ、という方は、一度先入観を捨てて、聴いてみてはいかがでしょうか?
そして第九をはじめ、全集なら39年盤がおすすめです。
トスカニーニ ベートーヴェン 交響曲第9番”合唱付き”
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン – Ludwig van Beethoven (1770-1827)
交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」 Op. 125
Symphony No. 9 in D Minor, Op. 125, “Choral”
1.(12:24) I. Allegro ma non troppo, un poco maestoso
2.(12:32) II. Molto vivace
3.(13:00) III. Adagio molto e cantabile – Andante moderato
4.(23:18) IV. Finale: Presto – Allegro assai
total(61:14)
ヤルミラ・ノヴォトナー – Jarmila Novotna (ソプラノ)
ケルステン・トルボルイ – Kerstin Thorborg (コントラルト)
ヤン・ピアース – Jan Peerce (テノール)
ニコラ・モスコーナ – Nicola Moscona (バス)
ウェストミンスター合唱団 – Westminster Choir
NBC交響楽団 – NBC Symphony Orchestra
アルトゥーロ・トスカニーニ – Arturo Toscanini (指揮)
録音: 2 December 1939, Carnegie Hall
ベートーヴェン・フェスティヴァル 1939 アルトゥーロ・トスカニーニ 、 NBC交響楽団
何の説明も要らないトスカニーニ+NBC響、1939年10月から12月に行われたベートーヴェン・ツィクルス(ベートーヴェン・フェスティヴァルとして開催)。
NBC響とのコンビも3シーズン目を迎え蜜月であり、巨匠の手足となって迅速に呼応するNBC響の妙技が聞きものです。70歳を少し超えたばかりのトスカニーニは気合体力充分。歌いまくってオーケストラを鼓舞します。
この超名演を初出であるトスカニーニ協会盤7枚組の未通針LPからまるごと復刻しました。さらに序曲集のLPも未通針物が見つかり、カプリングとして組み合わせております。演奏会場の8Hスタジオは残響皆無の殺伐とした音響として知られますが、このLPで聴くと意外やまろやかでオーケストラの音色もヨーロッパ的というか渋い風合いが出ております。
安定した重厚な味わいもアナログならではです。既出盤も多くM&A盤の復刻も非常に優れたものでしたが悪く言えば尖った感じのサウンドでしたので、当盤もぜひ聞いていただきたいと思います。
トスカニーニ協会盤にはニュースレターとして当時の証言や記事が充実しており、旧会員のご提供を得てこれらの日本語訳が付きます。さらに気鋭のジャーナリストネストル・カスティリオーネ氏によるFeeling the Spirit: Toscanini’s 1939 Beethoven cycle for NBC.という書下ろし記事がつきます。
ミューズ貿易
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