フルトヴェングラー RIAS放送コンプリート・レコーディングスより

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こんにちは、
ともやんです。

ドイツのレーベルAuditeからリリースされている「フルトヴェングラー RIAS放送コンプリート・レコーディングス」(CD13枚組)から2枚目に収録されているメンデルスゾーン、ベートーヴェン、J・S・バッハを聴きました。

宇野功芳氏の名著「フルトヴェングラーの全名演名盤」の記述を合わせて僕の聴いた印象を記します。

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フルトヴェングラー 戦後の円熟期の記録

今回聴いた3曲は、フルトヴェングラーは、戦犯の疑いで戦後の2年間全く演奏が出来なかったのですが、ようやく1947年5月25日に第一回の復帰公演を行い、センセーションを巻き起こしました。
当時フルトヴェングラーは61才。指揮者としてはもっとも脂が乗り切りこれから円熟期を迎える年齢でもあります。
多くの指揮者が70代、80代を迎えても現役を続けています。
本人もそのつもりだったことと思います。
しかし、後世の僕らは知っています。あまり時間がなかったことを。
戦後、ようやく自由に演奏活動ができたのも僅か7年で終わってしまいました。

それを運命と片づけるのは簡単ですが、戦争の愚かさと無意味さを改めて知ることになります。

まず、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」序曲。
フルトヴェングラーは、この約20年近く前の29年にも同曲の録音を残しています。そちらはも今回改めて聴きましたが、こちらは本当に素晴らしいです。

この演奏について宇野氏は著書の中で、次のように表現しています。

「何というデリケートな寂しさに彩られた演奏であろう。
中略
フルトヴェングラーの表現は、救いようもない<寂寥の調べ>である。」

なおこの名演は、以下のCDで聴くことが出来ます。

グレート・コンダクター・シリーズ/フルトヴェングラー 初期録音集 第3集
さて、宇野氏は、29年の録音を高く評価するあまり、この47年の録音については評価が低く、いきなり次のように書いています。

「デリカシーを欠くライヴ録音であり、1929年盤の<寂寥の調べ>はここにはない。」

まず、Auditeの復刻は鮮明な音で提供してくれています。このCDセットは2009年にリリースされているので当然宇野さんは聴いていると思いますが、本の改訂まではいかなかったのでしょう。

個人的には悪くないと思います。ライヴということでメリハリの効いたスピード感のある快演です。
ただ宇野氏のいう<寂寥の調べ>というとその部分はないかもしれません。
好みが別れるところだと思います。

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ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、フルトヴェングラーは5つの録音を残しています。その内、3つがメニューインとの録音です。
1回目が、44年の戦中の録音でソロは、当時のベルリンフィルのコンサートマスターのエーリヒ・レーン。そして最後が、53年5月のシュナイダーハンとのもの。

さて、ユダヤ系ヴァイオリニストのメニューインが、フルトヴェングラーと戦後いち早く共演したということは「事件」でした。

実際、1933年にフルトヴェングラーが、多くのユダヤ系音楽家にベルリンフィルと共演するよう招聘状を出したことがありますが、当時17才のメニューインはいち早く拒絶の返答しています。
フルトヴェングラーは、政治と音楽は関係ないと伝えていますが、もしここでユダヤ系の音楽家が、その招聘のもとベルリンフィルと共演するれば、ヒトラー政権を容認することになるということをこの若者はいち早く見向いていたのです。
つまり当時48歳のフルトヴェングラーよりも17才の少年が政治に対する鋭い視点を持っていたわけです。

そんなメニューインがなぜフルトヴェングラーと共演するようになったのか?もし共演すれば、多くのユダヤ系音楽家を敵に回す可能性もあります。実際、ユダヤ系音楽家が支配するアメリカの音楽界からは、事実上追放されたようで移住先のイギリスを拠点として活動を続けました。

これには、メニューインが戦後ドイツに行った際強制収容所から生き延びた多くの人から、フルトヴェングラーがナチに反抗していたこと、その高潔な人柄を聴くにつけ、フルトヴェングラーへの判断を変えたようです。
また彼の妻ダイアナがフルトヴェングラーと知り合いで1946年に実際にフルトヴェングラーと対面して、親しみも感じていたからのようです。

さて肝心の演奏は、フルトヴェングラーの心の籠ったサポートでメニューインが伸び伸び弾いている印象です。

フルトヴェングラーは、終始落ち着いた演奏で終始すればもっと良かった思いますが、第一楽章の中で素っ気なくテンポを早めて過ぎる部分もありちょっと残念です。

最後のバッハの管弦楽組曲第3番は、この3曲の中でもっとも感銘深い演奏です。
感情移入の強いバッハで、現代ではあまり聴かないスタイルですが、逆にバッハだからこんなスタイルでも感動するのかもしれません。

特に「アリア」は、よりその傾向が強くフルトヴェングラーを堪能できます。

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フルトヴェングラー メンデルスゾーン、ベートーヴェン&バッハ

フェリックス・メンデルスゾーン – Felix Mendelssohn (1809-1847)
「夏の夜の夢」序曲 Op. 21
1.(12:58)A Midsummer Night’s Dream Overture, Op. 21

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 – Berlin Philharmonic Orchestra
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー – Wilhelm Furtwangler (指揮)
録音: 28 September 1947, Berlin, Germany

———————————

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン – Ludwig van Beethoven (1770-1827)
Violin Concerto in D Major, Op. 61
ユーディ・メニューイン – Yehudi Menuhin (ヴァイオリン)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 – Berlin Philharmonic Orchestra
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー – Wilhelm Furtwangler (指揮)
録音: 28 September 1947, Berlin, Germany

2.(23:44) I. Allegro ma non troppo
3.(10:26) II. Larghetto
4.(09:56) III. Rondo
total(44:06)

———————————

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ – Johann Sebastian Bach (1685-1750)
Overture (Suite) No. 3 in D Major, BWV 1068

5.(08:11) I. Overture
6.(06:39) II. Air
7.(02:51) III. Gavotte
8.(00:55) IV. Bourree
9.(02:35) V. Gigue
total(21:11)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 – Berlin Philharmonic Orchestra
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー – Wilhelm Furtwangler (指揮)
録音: 24 October 1948, Berlin, Germany

フルトヴェングラー / コンプリートRIASレコーディングス

Auditeが満を持して放つ フルトヴェングラー・コンプリートRIASレコーディングズ!
RIASに眠っていたオリジナルテープから細心のマスタリングで、今よみがえる真実のフルトヴェングラー!

Auditeのホームページ(http://audite.de/index.php?bnm=181)でオリジナルのテープの音質とマスタリング後の音質のチェックができます。
20数分間にわたり、いかなるポリシーのもとにAuditeがリマスタリングをほどこしたかが、マスタリング前と後で聴き比べることができます。
特にブルックナー8番、1楽章コーダのわざとのような咳の嵐(それにしても、あの音楽でどうしてあんなに盛大な咳ができるのか!当時のベルリンはよっぽど風邪がはやっていたのか?3月なのに?)がマスタリング後は音楽性をまったく損なうことなく、気にならないレヴェルまで抑えられているのはデジタル・テクノロジーの驚異と申せましょう。
そして全編にわたりナレーションを担当しているのはあの、アンジェラ・ヒューイットというのも驚きです。
素晴らしく聞き取りやすくわかりやすい英語です。ぜひ御一聴ください。
演奏そのものについてはもうなにも付け加えることはない素晴らしいものばかり。戦後のフルトヴェングラーの円熟期、絶頂期の音楽がベルリンフィルとの黄金の組み合わせでたっぷり堪能できる、Auditeにフルヴェン・ファンは足を向けて寝られなくなること疑いなしのセットでございます。
※コメント提供キングインターナショナル

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