こんにちは、
ともやんです。
フルトヴェングラーの録音では、やはりベートーヴェンです。
またフルトヴェングラー自身、ベートーヴェンに対して特別な感情を持っていたと思います。
ナチスへの協力を疑われ、戦後2年間の指揮活動の禁止から嫌疑が晴れ、復帰コンサートで、エグモント序曲、交響曲第6番と5番というオール・ベートーヴェンのプログラムを組んだことからもわかります。
しかも第5番と第6番”田園”というのはやはり考え抜かれたプログラムだと思います。
今日は、それについて考えたいと思います。
フルトヴェングラー 復帰コンサートのプログラム
1947年5月25日、フルトヴェングラーは、ベルリンで2年数ヵ月ぶりに観衆の前に戻ってきました。チケットは、売り出しと同時即日売り切れだったそうです。
そして、フルトヴェングラーが演奏したのは、エグモント序曲、交響曲第6番”田園”、第5番”運命”の順でした。
僕は、勝手にこのプログラムになった理由に空想を巡らしました。
まず、”運命”を最後に持ってくるのは、すぐ決まったと思います。そして最初になにか序曲を持ってくるのも特に悩まないところです。
序曲は何がいいか?
候補としては、コリオラン、エグモント、レオノーレ第3番あたりですが、フルトヴェングラーが、エグモントを選びました。
さて、中間には何がいいか?
まず、フルトヴェングラーとしてオールベートーヴェンというのは揺るがなかったと思います。そうなるともう一つ交響曲か、それともピアノ協奏曲かヴァイオリン協奏曲か、となります。
そうなるとソリストが必要になります。
戦争によってユダヤ系のソリストは、アメリカなど海外に行っていますし、ドイツの留まっているソリストも少なかったと思います。
そうなるともう一つ交響曲か。
まず、最後の”運命”に匹敵する第3番”英雄”、第9番”合唱”は外されます。
そして、第1番、2番、4番、8番は役不足。
しかも第2番、8番は、録音も少ないことからフルトヴェングラーは好んで取り上げていません。
そうなると候補が絞られます。第6番”田園”か、第7番か。
この2曲を比べた場合、第7番が、”運命”に曲想が近いので、最終的に”田園”になったのではないか、と僕は想像します。
しかもこの2曲、ベートーヴェンも初演を同時に行っています。
フルトヴェングラー ベートーヴェン交響曲第6番”田園”
フルトヴェングラーの”田園”は、特異な演奏です。
第一楽章の遅く沈んで重い演奏から驚かされます。
この楽章の標題は、
「田舎に着いた時の楽しい気分」
からは、ほど遠い演奏です。
しかもこのウィーンフィルとのスタジオ録音は、ライブでの緩急自在の動的な部分を抑制し、刻明に端正に務めているようで表現することに、その傾向がより強いです。
だから、一般に思われる標題性のある田園交響曲というよりも、まさに絶対音楽としての交響曲第6番なのです。
フルトヴェングラーのライブ感が一番出ているのが、第4楽章の「嵐」です。
その盛り上げかた、そしてティンパニがややオフビート気味に絶妙に入るタイミングなどカッコいいです。しかしライブほど夢中にならず、やはり端正に描かれているので余計感銘を受けます。
そして終楽章は、もっともフルトヴェングラー的です。ここではいままでも抑えていた感情が解き放たれるように自由を獲得し、緩急自在に駆けめぐります。
この演奏は、一般的な規範から外れますが、フルトヴェングラーの芸術を端のできる名演です。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン – Ludwig van Beethoven (1770-1827)
交響曲第6番 ヘ長調 「田園」 Op. 68
Symphony No. 6 in F Major, Op. 68, “Pastoral”
1.(13:07) I. Awakening of Cheerful Feelings Upon Arrival in the Country: Allegro ma non troppo
2.(10:19) II. Scene by the Brook: Andante molto mosso
3.(08:40) III. Merry Gathering of Country Folk: Allegro
4.(06:55) IV. Thunderstorm: Allegro
5.(11:56) V. Shepherd’s Song: Happy and Thankful Feelings after the Storm: Allegretto
total(50:57)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 – Vienna Philharmonic Orchestra
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー – Wilhelm Furtwangler (指揮)
録音: 24-25 November 1952, Musikverinsaal, Wien, Austria
【CD】 ベートーヴェン: 交響曲全集(2010リマスター)<限定盤> ヴィルヘルム・フルトヴェングラー 、 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 他
フルトヴェングラーのベートーヴェンに対する思いが伝わる名盤であり遺産! このBOXでの音源は、2010-2011年にアビー・ロード・スタジオのエンジニアにより、オリジナル・ソース(78回転レコードのメタル・マスターまたはアナログ・テープ)の選定から行われ、96kHz/24bitにてリマスターされたものです。
ワーナーミュージック・ジャパン
最後に
どうして、フルトヴェングラーに魅かれるんだろう。
そして、最近ようやく、なぜ、フルトヴェングラーに魅かれるのかわかったような気がします。
それは、フルトヴェングラーの演奏が完成されていないからです。
常に、初めてその曲を演奏するような緊張と真剣さとワクワク、ドキドキ感が感じられるからです。
フルトヴェングラーが生きていた時代、彼のコンサートに聴きに来た人達は、
「今日は、どんな演奏をしてくれるのだろう?」、
とワクワク、ドキドキしてやってきたのだと思います。
フルトヴェングラーの演奏は、主観的な響きやテンポを大胆に動かすので、わかり易いのです。
しかも、奥が深いのです。
だから聴くたびに新しい発見があります。
僕は、死ぬまでフルトヴェングラーの録音を聴き続けることでしょう。
フルトヴェングラー CDベスト10 宇野功芳編
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