こんにちは、
ともやんです。
オットー・クレンペラー(1885-1973)が、20世紀の作曲家の曲を集めた好企画です。
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『クレンペラーの遺産/20世紀音楽』
また「クレンペラーの遺産」BOXシリーズ最終ということで、BBCラジオで放送されたクレンペラーの生涯を本人のインタビューを織り交ぜながら構成した特別音源も収録されているのが嬉しいです。
それも約2時間近い収録時間で嬉しい限りです。ただ英語が苦手な人は、聴き通すのはなかなかの苦行ではありますが。
クレンペラーの芸風を知る最適な名演集
クレンペラーのアプローチの特徴は、まず皮膚感覚の軽さや深刻癖の重さとは縁のないテクスチュアの風通しのよさ、造型的な見通しの良さにあるといえます。
そして、作曲家によって書き込まれた音符の数々は細大漏らさず音化され、克明に配置されるというユニークな表現様式へと結実しているのです。
音楽評論家の福島章恭氏は、その演奏スタイルを滔々と流れる大河のようだと表現しています。遠くから眺めていると、緩やかな流れに見えるのですが、近づいてみるとその膨大な水量がかなりの勢いで流れているように、その演奏は途方もなくスローテンポでありながら、全く滞ることがなく流れるということです。
しかもその外面は、微笑など全くな無愛想だが、一旦そのぶ厚い殻の内側に入ってみると無限なニュアンスが湛えられていて、その妙味が堪らないと書かれています。
その音楽は、驚くほど「甘さ」「素朴さ」「お洒落」「憐憫」といった要素からかけ離れたものであり、反対に、引用や皮肉、隠喩暗喩といった要素にはきっちりとした対応をみせるのです。
表現主義哲学者エルンスト・ブロッホとの交流や、マーラーやR.シュトラウス、ヤナーチェク、ストラヴィンスキー、シェーンベルク、ベルク、ヴェーベルン、ヒンデミット、アイスラー、ワイルらとの現実社会における関係がもたらしたものが、そうした芸風の確立に奏効したことは容易に推察されるます。
実際、同時代音楽の推進者として、クロール・オペラでの業績をはじめ、クレンペラーが果たした役割には非常に大きなものがあったと評されています。
だから、この20世紀音楽の録音集は、クレンペラーを知る貴重なものです。
しかも、残念なことにフィルハーモニア管弦楽団とのステレオ録音には20世紀の現代音楽の録音が少ないし、これは当然クレンペラーの意志というよりもレコード会社の戦略で、売れることを前提とした選曲だと思います。
そして自身の作曲した交響曲第2番と弦楽四重奏曲第7番も収録されていて、これがなかなかの出来栄えで、聴き入ってしまいました。
クレンペラーの遺産 20世紀音楽 選曲集
Disc 1
イーゴリ・ストラヴィンスキー – Igor Stravinsky (1882-1971)
3楽章の交響曲
Symphony in 3 Movements
1.(11:02) I. quarter note = 160
2.(06:35) II. Andante
3.(06:43) III. Con moto
total(24:20)
録音:1962年3月28、30日、5月16日
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バレエ音楽「プルチネッラ」組曲
Pulcinella Suite
4.(02:18) I. Overture: Sinfonia
5.(03:40) II. Serenata
6.(05:13) III. Scherzino – Allegro – Andantino
7.(03:28) IV. Tarantella
8.(04:36) V. Toccata
9.(01:37) VI. Gavotta – Variation No. 1 – Variation no. 2
10.(02:13) VII. Vivo
11.(02:13) VIII. Minuetto – IX. Finale
total(25:18)
録音:1963年2月18日、5月14、18日
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クルト・ヴァイル – Kurt Weill (1900-1950)
小さな三文音楽(抜粋)
Kleine Dreigroschenmusik (excerpts)
12.(02:21) I. Overture: Maestoso
13.(02:19) II. The Ballad of Mack the Knife: Moderato assai
14.(03:18) IV. The Ballad of Pleasant Living: Foxtrot
15.(02:34) V. Polly’s Song: Andante con moto
16.(02:45) VI. Tango-Ballade
17.(02:48) VII. Cannon Song: Charleston-Tempo
18.(04:23) VIII. Dreigroschen-Finale
total(20:28)
録音:1961年10月31日、12月2日
Disc 2
オットー・クレンペラー – Otto Klemperer (1885-1973)
1.(07:33)歌劇「終着点」 – メリー・ワルツ
Das Ziel: Lustiger Walzer (Merry Waltz)
録音:1961年10月30日
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交響曲第2番*
Symphony No. 2
2.(05:32) I. Allegro
3.(09:59) II. Adagio
4.(05:04) III. Scherzo
5.(04:32) IV. Finale
total(25:07)
録音:1969年11月3日
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弦楽四重奏曲第7番
String Quartet No. 7
6.(06:07) I. Fuga: Moderato
7.(03:17) II. Scherzo: Vivace
8.(03:52) III. Intermezzo: Alla marcia
9.(09:58) IV. Adagio
total(23:14)
演奏:フィルハーモニア弦楽四重奏団
録音:1970年2月16、17日
Disc 3
パウル・ヒンデミット – Paul Hindemith (1895-1963)
組曲「気高い幻想」
Nobilissima visione Suite
1.(06:55) I. Einleitung und Rondo
2.(08:06) II. Marsch und Pastorale
3.(05:34) III. Passacaglia
total(20:35)
録音:1954年10月7、8日
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エンゲルベルト・フンパーディンク – Engelbert Humperdinck (1854-1921)
歌劇「ヘンゼルとクレーテル」(抜粋)
Hansel und Gretel (excerpts)
4.(08:35) Prelude
5.(09:02) Dream Pantomime
total(17:37)
録音:1960年9月27-29日
フィルハーモニア管弦楽団 – Philharmonia Orchestra
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 -New Philharmonia Orchestra*
オットー・クレンペラー – Otto Klemperer (指揮)
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(106:57)オット―・クレンペラー:伝記的回想録
Otto Klemperer: A Biographical Memoir
ジョン・トランスキー – Jon Tolansky (ナレーター)
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巨匠クレンペラーの没後40周年を記念して、ストラヴィンスキー、ヴァイル、ヒンデミット等20世紀を代表する作曲家の作品と共に自作自演をまとめたスペシャル・ボックス。
「クレンペラーの遺産」BOXシリーズ最終ということで、BBCラジオで放送されたクレンペラーの生涯を本人のインタビューを織り交ぜながら構成した特別音源も収録!
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