こんにちは、
ともやんです。
シェルヘンが亡くなる前年の1965年にルガノ放送交響楽団を振って録音したベートーヴェンの交響曲全集が出たのは確か1990年頃だったと思う、といい加減なことは書けないので調べてみると、評論家の平林氏もある本にそう記述しているので間違いではないらしい。
僕は、評論家諸氏が音楽誌などで騒いでいたので知ったが、まずヘルマン・シェルヘンという名前は、それまでに聞いたことがったかもしれないが、気にも留めないような指揮者で、しかもCDとなると全く持っていなかった。
また、当然その演奏も聴いたことがなかったと思う。
まず、当時宇野さんが絶賛していた第3番”英雄”を買った。
一聴してその異常さに驚いた。
まるでアンサンブルが乱れ捲りながらも凄まじい生命力と推進力を感じたのだ。
その後しばらく経って輸入盤で全集を購入した。
一通り聴いたが、これは凄い全集だ。かと言って人には勧められない。
特にこれからクラシック音楽に接して行こうという人には絶対勧められない。
しかし、聴いてのおもしろさは格別な全集であることは確かだ。
その中でも、第8番はその異常なテンポに惹かれてしまう。
シェルヘン ベートーヴェン交響曲第8番 メトロノーム
第8番のテンポの異常さは、シェルヘンが、ベートーヴェンが指定したメトロノームのテンポを守ろうとしたからと思われます。
例えば、僕が持っている全音のポケットスコアでは、第8番の第一楽章のメトロノーム指定は、付点2分音符で69なのです。つまり3/4拍子なので4分音符で207。
スマホに入れているメトロノームに設定してみると演奏のテンポに近いことがわかります。
4つの楽章の中では、第2楽章がまともに聴こえるのは、ベートーヴェンの指定は、かなり遅いのです。だから実はここではシェルヘンが譲歩して一般的なテンポにしています。
諏訪内晶子さんにエッセイ「ヴァイオリンと翔る」の中で、世界的なヴァイオリニスト、アイザック・スターンの伝えてくれた言葉が忘れられないと記されています。
それは、「演奏という行為は、自分の考えを自分の音で表現すること」という言葉だそうです。
それからすると指揮者は、オーケストラから自分の音を引きだすことだということになります。
つまりシェルヘンの考えは、ベートーヴェンのメトロノーム指定を守ることだということなんですね。
そしてただ機械的に守るのではなく、そこに情熱を傾けたので異常な名演となったのです。
ぜひ、聴いてみてください。
シェルヘン ベートーヴェン交響曲第8番
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン – Ludwig van Beethoven (1770-1827)
交響曲第8番 ヘ長調 Op. 93
Symphony No. 8 in F Major, Op. 93
1.(07:11) I. Allegro vivace e con brio
2.(03:54) II. Allegretto scherzando
3.(04:05) III. Tempo di menuetto
4.(07:01) IV. Allegro vivace
total(22:11)
ルガノ放送交響楽団 – Della Svizzera Italiana Lugano
ヘルマン・シェルヘン – Hermann Scherchen (指揮)
録音:1965年3月19日
ベートーヴェン: 交響曲全集+「運命」リハーサル ヘルマン・シェルヘン ルガノ放送交響楽団
シェルヘンの名を一気に高めたスイス、ルガノにおけるベートーヴェン・ツィクルス。亡くなる前年の演奏とはとても思えない、気力体力充実の超名演。
シェルヘンはベルリンフィルのヴィオラ奏者出身故に、良く聴くと弦楽器への厳しい指示が分かります。波を打つような締め付けと緩めの多用は特に顕著です。
第1番、第2番、第8番など、小規模な曲にも一切の手抜きなしのガチンコ勝負で圧倒されます。怒鳴り声やブラヴォも凄い!原則、猛スピードで駆け抜けるスタイル。
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